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 アメリカの政治的混乱と分断を10年以上前に見通したといわれる学者がいる。「歴史動力学」を提唱するピーター・ターチン氏。連邦議会議事堂襲撃事件などで不気味な「予言」が的中したと注目を浴びた。第2次トランプ政権の迷走は氏の理論の精度を証明するかのようだ。一方で、歴史に法則性を見いだそうとするのは危ういとの慎重論が根強くある。どう考えるべきか。ターチン氏の著書「エリート過剰生産が国家を滅ぼす」に解説を寄せた社会学者の尾上正人・奈良大学教授に聞く。

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写真・図版
奈良大学社会学部教授の尾上正人さん=本人提供

 2020年代の米国は政治的不安定さがピークを迎える――。15年前、「歴史動力学」を提唱する米国の学者ピーター・ターチン氏が予想しました。その後実際に連邦議会議事堂襲撃やトランプ氏暗殺未遂の事件が起きたことで、ちょっとした注目を浴びました。

 エリートが「過剰生産」される、つまり増えすぎると、エリート間競争の敗者が貧困化した大衆を動員し、政治的な混乱や暴力が起きやすくなる――。米国の南北戦争や中国の太平天国の乱を例に挙げて、そう説いています。数理モデルを用いて、長い時の流れの中に、安定期と不安定期が交互に訪れる大まかな周期性を見いだす。つまり、一種の歴史の法則性を主張しているのが特徴です。

 社会学には100年ほど前か…

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